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ぎんのペンセル

銀のペンセル

小川 未明

「児童時代 創刊号」1930(昭和5)年12月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,618 字 · 6 页

青空文庫

「いいとこへ、つれていってやろうか。」と、少年は先に立って、草を分けて、山の方へ歩きました。

「どこへゆくんだい?」

勇ちゃんは、顔をあげて、いくたびもあちらを見ました。少年は、だまって歩いていましたが、やがて目の前に、林が望まれました。葉風が、きらきらとして、木の枝は、風にゆらめいていました。もう口を開けているくりの実がいくつも、枝のさきについているのでした。

「僕、見つけておいた、いいものを取ってきてあげるから、ここに待っていたまえ。」と、少年は雑木林を分けてはいりました。そして、あちらの、こんもりとした、やぶのところへいって、しきりと、つるをたぐり寄せていました。勇ちゃんは、後ろについてはいる勇気がなく、林の端に、立って待っていると、少年は紫色のあけびの実をいくつも、もいできてくれたのであります。

「この森には、りすがいるから、みんな食べてしまうんだ……。」と、少年は、いいました。

勇ちゃんは、はじめて、りすは、こんなところにすんでいるのかと知りました。

「東京へ持って帰って、お土産にしよう。」

勇ちゃんは、兄さんや、姉さんや、また、近所の叔母さんに、これを見せたら、どんなに喜ばれるだろうと思いました。