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ぎんのペンセル
銀のペンセル
小川 未明
「児童時代 創刊号」1930(昭和5)年12月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,618 字 · 6 页
「東京へ持って帰るなら、まだ、いいものがあるぜ……。高山植物が、いいだろう……。」
「高山植物があるの?」
勇ちゃんは、少年について、こんどは山の方へ上ってゆきました。山と山の間になっている谷合いにさしかかると、日がかげって、どこからか、霧が降りてきました。岩角に白い花が咲いているのを、少年は、見つけて、
「これは、うめばちそうだ。」といって、丁寧に根から掘ってくれました。
また、湿っぽい、日のわずかにもれる、木の下をはって、小さいさんごのような赤い実のなっているのを指しながら、
「これは、こけももだ。こうして持っていったら、根がつくかもしれない。」と、少年はしんせつに、掘ってくれました。
温泉場の町まで、二人は、いっしょにきました。別れる時分に、
「君、また明日のいまごろ、あの大きなしらかばの木の下であわない?」と、勇ちゃんはいいました。
無邪気な、黒い目をした少年はうなずいて去りました。
「なにか、僕の持っているものをやりたいな。」と、勇ちゃんは少年と別れてから、考えていました。
「明日あったとき、僕の大事にしている銀のペンセルをやろう……。」と、心の中で、きめました。