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ぎんのペンセル
銀のペンセル
小川 未明
「児童時代 創刊号」1930(昭和5)年12月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,618 字 · 6 页
高山植物は、都会へ持ってくるとしおれてしまいました。
「どうかして根のつくように。」と、勇ちゃんは高い物干し台の上に、こけももとうめばちそうの鉢を持ってきておいたのです。青い青い夜の空は、遠く、北の方に垂れかかっていました。そのかなたには、これらの植物のふるさとがありました。星の光が高原の空にかがやいたように、夜ふけの空にきらめき、さすがに、都会にも、秋がきたのを思わせて、風がひやひやとしました。
「ここに置いたら、山にいるような気がして、根がつくかもしれぬ。」と、勇ちゃんは、少年の取ってくれた草花を大事にかばいました。そしてあくる日、夜の明けるのを待って、物干し台に上がってみますと、なんとしても、だますことはできなく、うめばちそうの白い花は頭を垂れ、こけももの細かい美しい葉は幾分か黄ばんでいるのです。
あの清浄な、高い山でなければ、これらの草花は育たないことを知りました。勇ちゃんは、それから毎晩のように物干し台に上がって、青い夜の空をながめながら、高い山や、少年のことを思い出していました。白々として、銀のペンセルのように、天の川が、しんとした、夜の空を流れて、その端を地平線に没していました。