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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

200 死骸の花嫁

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,163 字 · 25 页

青空文庫

さア、私を、この母親を縛って下さい」

源六の女房のお国は、自分の手を後ろに廻して、平次の方に詰め寄るのです。それは平次も持て余したほどの、無智で、執拗で、気違い染みた熱心さでした。

「――行列は本郷一丁目の田原屋の門口へ着いたとき、主人は素知らぬ顔をして駕籠の扉を開け、芝居染みた仰天振りを見せた」

平次はそれを払い退けるように語り進みます。

「もうたくさん。さア、親分。私を、この私を縛って下さい」

「静かに、お神さん、――隣の部屋で聴いていた源三郎は外へ出て行った様子だ。格子を開けっ放したまま、可哀想に、――この俺にはどうする事も出来ない」

平次はガックリと首をうな垂れます。

「あッ、あの子は出て行った――死ぬ気に違いない、――お前さん、追っかけて下さい、――あの子はまだ若い。私が、私が」

お国は障子を押し倒して這い出すと、跣足のまま格子の外へ、母親の本能の導くままに、暁闇を縫ってバタバタと伜の後を追って行くのでした。

×          ×

「いやだな、八。御用聞は罪が深いよ」

暁の風に、夏ながらゾッと総毛立つ様子、――帰りを急ぎながら平次は斯うつづけました。