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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
200 死骸の花嫁
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,163 字 · 25 页
三
伊賀屋源六は弁解らしく言うのです。そんな事で、つまらぬ疑いを受けては叶わないと思っている様子です。
「その時、お嬢さんは何か言わなかったかな」
「有難うと仰しゃった様子で」
「四方は暗かったのか」
「へエ、――親御の秋山様は浪人者の娘が嫁入りするのに街の明るいうちから、麗々しく練り出すわけにも行くまいと仰しゃって、行列を揃えたまま、しばらくお庭で待っておりました、――左様、動き出したのは四半刻も経ってからでしょうか」
伊賀屋源六の言うこともよく行き届きます。四十五六の一刻者らしい男ですが、芝口に数代住み古りた質屋で、愛嬌のないのは稼業柄かもわかりません。
三
「それっきり、嫁御の無事な姿を見たものはないのかな」
平次はさり気なく諮ねますが、この問いがいかに重要な意味を持っているか、八五郎――後ろの方に神妙に控えている顎の長いのが、急に分別顔になったのでもよくわかります。
「行列が動き出そうとするとき、乗物の扉の隙間から、花嫁の裾が喰み出していることに気が付いて、私が直してやりましたが――」
「扉を開けたのだな」
「細目に開けました」
「そのとき花嫁に変りはなかったのか」