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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

200 死骸の花嫁

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,163 字 · 25 页

青空文庫

「いつもの通り、お元気でございましたよ。ニコニコして」

それは仲人伊賀屋源六の女房お国でした。四十二三の世話女房で、世帯やつれはして居りますが、何となく見よげです。

「すると花嫁は、今晩の祝言を喜んでいたわけだな」

「それはもう、――本人が望んで来たくらいですもの」

お国は妙に太鼓判を押します。

「お神さんが裾を直すとすぐ駕籠が上がったのだな」

「左様でございます」

「それから宇田川町から本郷まで、遠い道を一刻もかかって辿り着いたことだろうが、この田原屋の店先へ来て仲人の伊賀屋さんが駕籠の扉を開けるまで、誰も花嫁の顔を見た者がないわけだな」

「?」

「すると、お神さんに妙な疑いがかかるのだが――」

平次は含蓄の多いことを言って、伊賀屋の女房の顔を見るのでした。

「飛んでもない。親分さん、私が――」

女房はあわてて打ち消しましたが、何を思い付いたか、急に勢い込んで、

「そうそうそう言えば芝口で、仙台様お忍びの行列に逢いましたが」

「夜分にお忍びの行列?」

「本所お下屋敷からのお帰りだったそうで」

それはありそうなことでした。

「そのあいだ花嫁の駕籠は?」

「路傍にも置けませんので、しばらく路地に入れて、お行列の通り過ぎるのを待ちました」