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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

124 唖娘

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,006 字 · 25 页

青空文庫

――綺麗な女房の方は俺の鑑定じゃ納まるまいが、大きな仕事ならちょうど良いのがあるぜ」

「ヘエ」

「例えば、近ごろ三輪の親分が追い廻している、痣の熊吉だ。下谷浅草から神田小石川へかけて二三十軒も荒らし、人間も五六人斬られているが、どうしても捉まらねエ」

平次の言うのは尤もでした。去年の暮あたりから風のごとく去来する怪賊、金高にして二三千両もかせいだことでしょうが、文字通り神出鬼没で、江戸中の岡っ引が、束になって追い廻しても、なんとしても捉まりません。

「そいつはあっしも心掛けているが、首筋に火の燃えるような真っ赤な痣のある人間なんか、滅多に見付かりませんよ」

兇賊は何の変哲もない小男で、黒い覆面をしたっきり、町人風の小気のきいた様子で、たいてい宵のうちに入り、往来がまだ賑やかなうちに、いずこともなく逃げうせるのが特徴とされております。

もう一つの特徴は覆面の下から見える左首筋に、小判形の真っ赤な痣のあることと、それから、恐ろしく手の利くことと、身体が人間離れがしているほど軽捷なことです。

「で、まるっきり見当が付かないのか」

「ヘエ、首筋に痣のある人間さえ見付かればワケはないんだが」