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かぎ
鍵
谷崎 潤一郎
「中央公論」中央公論社、1956(昭和31)年1月、5月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,182 字 · 200 页
このところほとんど三日置きぐらいに木村さんが来てブランデーが始まり、クルボアジエはすでに二本目が空になり、そのたびごとに私が風呂場で倒れるので、敏子も愛憎が尽きたのであろう。深夜両親の寝室で時々煌々と電燈が点ったり、螢光燈ランプが輝いたりするのも、彼女は気がついて不思議に感じているに違いない。ただし全くそれだけが理由であるのか、他にも私たちに秘している理由があって別居を欲しているのであるか、そこのところは何とも云えない。「パパが何とおっしゃるかあなたが直接聞いてごらん。パパがよいとおっしゃれば私は反対しません」と答える。………
二月十四日。………木村ガ今日妻ガ台所ヘ立ッテ行ッタ留守ニ妙ナ話ヲシタ。「アメリカニポーラロイド(Polaroid)トイウ写真機ガアルノヲ御存ジデスカ」ト云ウノダッタ。ソノ写真機ハ写シタモノガ即座ニ現像サレテ出テ来ル。テレビデ相撲ノ実写ノ後デ、アナウンサーガ取リ口ノ解説ヲスル時ニ、キメ手ノ状況ガ早クモスチル写真ニ撮ラレテ出テ来ルノハポーラロイドヲ使ッテ写スノデアル。操作ハ極メテ簡単デ、普通ノ写真機ト変リハナク、携帯ニモ便利デアル。