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かがみもち
鏡餅
宮本 百合子
「新潮」1934(昭和9)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,163 字 · 15 页
そのとき、安否を見とどけるために別の仲間が一人ほんのちょっとはなれたところまで行っていたということがあとで知れた。その話をきいたとき、まさもサエも、
「何だろう! ただ見とどけたって、あとの祭りじゃないか」
と残念がった。ちょうどそこにサワ子も居合わせた。彼女は腹立たしそうに胸を張って、
「安否を見とどけるって――変ですわね、見とどけて、ああこれは否じゃわ、とそのままかえったんでしょうか」
真顔で云った。それをきいたとき、皆は一様に口惜しいなかで思わず失笑したのであった。
そばをたべたら、一時頃になった。百八の鐘を誰もききつけなかった。それがサエにはうれしかった。あの鐘があっちこっちで鳴り出すと、サエは子供のうちから落着かない変な気持になるのであった。
もう元日だからサエのかえる前に皆でお屠蘇もしようということになった。それを云い出したのはまさであった。
まさが下からごまめやこぶ巻を入れた重箱を持ってあがって来る。うしろからおばあさんもついて上って来て、大きいチャブ台のまわりに皆がつめかけた。
「ここが八畳間だといいんだがね」
佐太郎が云った。
「いいよ、あったかで……」