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やすりくず

鑢屑

寺田 寅彦

「週刊朝日」1924(大正13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,364 字 · 13 页

青空文庫

三

○○町の停留場に新聞売りの子供が立っていた。学校帽をかぶって、汚れた袖無しを着ていたが、はいている靴を見ると、それはなかなか立派なものだった。踵にゴムの着いた、編上げの恰好のいい美事なのであった。少なくも私の知っている知識階級の家庭の子供の七十プロセント以上はこれよりもずっと悪いか、あるいは古ぼけた靴をはいているような気がする。

四

馬が日射病にかかって倒れる、それを無理に引ずり起して頭と腹と尻尾を麻縄で高く吊るし上げて、水を呑ませたり、背中から水をぶっかけたりしている。人が大勢たかってそれを見物している。こういう光景を何遍となく街頭で見かけた。

この場合において馬方は資本家であり、馬は労働者である。ただ人間の労働者とちがうのは、口が利けない事である。プロパガンダの出来ない事である。

馬と人間と一つにはならないという人があるだろう。

そんな理窟がどこから出て来るかを聞きたい。

五

日本中の大工業家が寄り合って飯を食ったり相談をする建物がある。その建物の正面の屋根の上に一組の彫像のようなものが立っている。