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ながさきのいちべつ

長崎の一瞥

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,773 字 · 14 页

青空文庫

ところが、Y、昨晩床に入る時、大分工合を悪がった。天然痘流行の為、私達は念の為大分の臼杵で種痘をした。Y、十四位のとき種痘したぎりで、どうも全感らしく、崇福寺の裏の高い段々を降る時など、気分が悪くなったらしかった。今朝、発熱し動かれない。私一人行く。

長崎図書館は、諏訪公園内に在る小ぢんまりした図書館だ。昔、グラント将軍が来た時、滞留させるに適当なところがなく、其為に交親館というのを此処に建ててその用に供した。其を改造したものだそうだ。入口から、上野のように陰気で物々しくないのがよい。

永山時英氏は、長崎史研究者として権威ある人。昨今出版された大部な切支丹資料研究は、插画を見た丈でも益されることが多大だ。鹿児島出身。三時間に亙って懇切に私の質問に答えたり、書庫を見せられたりした。書庫には、出島和蘭屋敷の絵巻物、対支貿易に使用された信牌、航海図、きりしたんころびに関する書つけ、シーボルトの遺物、フェートン号の航海日誌、羅馬綴の日本語にラテン語を混えた独特な趣味あるミッション・プレス等々価値あるものが沢山ある。

其節永山氏も云われた通り、長崎市が博物館を未だ持たないのは、まことに残念なことだ。