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もん

門

夏目 漱石

宗助在秋日午后躺着发呆,和妻子有一搭没一搭聊天,平淡的日子下好像藏着说不出口的秘密。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,830 字 · 278 页

青空文庫

「こうでしょう」と云ったぎり、物指の先を、字の留った所へ置いたなり、澄み渡った空を一しきり眺め入った。宗助は細君の顔も見ずに、

「やっぱりそうか」と云ったが、冗談でもなかったと見えて、別に笑もしなかった。細君も近の字はまるで気にならない様子で、

「本当に好い御天気だわね」と半ば独り言のように云いながら、障子を開けたまままた裁縫を始めた。すると宗助は肱で挟んだ頭を少し擡げて、

「どうも字と云うものは不思議だよ」と始めて細君の顔を見た。

「なぜ」

「なぜって、いくら容易い字でも、こりゃ変だと思って疑ぐり出すと分らなくなる。この間も今日の今の字で大変迷った。紙の上へちゃんと書いて見て、じっと眺めていると、何だか違ったような気がする。しまいには見れば見るほど今らしくなくなって来る。――御前そんな事を経験した事はないかい」

「まさか」

「おれだけかな」と宗助は頭へ手を当てた。

「あなたどうかしていらっしゃるのよ」

「やっぱり神経衰弱のせいかも知れない」

「そうよ」と細君は夫の顔を見た。夫はようやく立ち上った。

針箱と糸屑の上を飛び越すように跨いで、茶の間の襖を開けると、すぐ座敷である。