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とうぎゅう

闘牛

国枝 史郎

「新趣味」1922(大正11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,976 字 · 20 页

青空文庫

「閣下」と彼は嘆息して「ほんとに立派な牛ですなあ、市民達が待ち兼ねる筈ですよ。これ程立派とは思いませんでした。明日の競技で此動物が、どんな離れ業を演じるか、こいつはほんとに見物です……ところで牛飼人は何処にいます? これほどの猛牛を使いこなすとは、これも驚いた名人ですな」

「牛飼人のホセは何処に居るか!」

老宮相は呼び立てた。すると、警手達の群の中から、二十八九の若者が踊るようにして走って来た。

「ほほう、君がホセ君かね」ラシイヌは愉快そうに話しかけた。

「私がホセでございます」若者の声は逞しかった。

「それでは一寸君に訊くが、この牛は飼葉をよく食うかね」

「他の牛の三倍は食いましょう」

「今日は何回くれたね?」

「朝一回だけくれました。それも極めて少量です」

「何故一回しかくれないのかね?」

「競技の前日一週間は食を減らすのが法則です」

「ところで水は飲ましたろうね?」

「夕方一回飲ませました」

「ふうむ、夕方一回か」探偵は怪しく微笑したが、直ぐ快活な調子に帰り、

「これでもう質問はありません。いろいろ何うも有難う」

ホセは恭しく頭を下げた。しかしラシイヌは手を出した。