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とうぎゅう

闘牛

国枝 史郎

「新趣味」1922(大正11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,976 字 · 20 页

青空文庫

六

で、彼サンジカリストは、そうやって、牛飼人になったものの、低い身分でございますので、宮廷の中へ忍び込む事も宝庫の中へ這入ることも、「サラセンの耳飾」を盗むことも出来なかったのでございます。

で彼は一人宮廷内の侍従職といったような高官を、自分の相棒に引き入れて、目的を遂げようと目算みました。そして其ワナにかかったのが閣下の甥御なのでございます。折柄閣下の其甥御は、閣下の令嬢との婚約を閣下のために破壊され、自暴自棄になって居りましたので、すぐに彼の仲間となりまして、昨夜は闘牛の前夜というので、宮廷が何となく騒がしいのを、よいことにして宝蔵へ這入り目的を達したのでございます……)

そして尚ラシイヌは斯う云っている。

(次に、私は、「サラセンの耳飾」を何うして何処で発見したか、お話し致したいと存じます)

六

(今日の競技の立派だったことは、そして市民達のあの熱狂は、近年に無いことでございました)

ラシイヌの手紙は、突然此処で、今日競技場で行われた闘牛のことに就いて記している。

(追い込まれる闘牛のどれを見ても、みんな素晴らしい逸物でただただ驚嘆するばかりでした。