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とうぎゅう
闘牛
国枝 史郎
「新趣味」1922(大正11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,976 字 · 20 页
それに又一方闘牛者達の、あの鮮かの戦闘ぶりは!
どの牛を見ましてもその逞さは驚かれるばかりでございましたが、いよいよ最終の競技となって、宮廷闘牛の現われました時には、その巨大さと獰猛さに、見物はすっかり気を呑まれて、静まり返ったではございませんか。しかし其次の瞬間のあの狂わしい喝采ぶりは! 数千の花束が投げられる。香水が雨のように注がれる。見物という見物は逆せ上って、号泣するものさえありました。
やがて闘牛者が乗り込んで来て、競技を開始しました時、又もや一時に見物席は静まり返ったではございませんか。
騎馬の闘牛者の投げる鎗、また翻えす深紅の袍、傷付くごとに怒号する闘牛の声の物凄かったこと。
その時、一人の闘牛者は、角で突かれて馬から落ち、死んで了ったではございませんか。
ところが此処にただ一つ、不思議なことがございました。それは何かと申しますに、どういう訳か闘牛が、絶えず頭を左の方へ傾げることでございます。
一時あまりも狂い廻わると、さすがの宮廷闘牛も、居縮んで了ったではございませんか。それから大木でも倒すように斃れて了ったではございませんか。見ると背と云わず腹といわず、鎗が無数に刺さっていて血が滝のように流れている――屍骸はすぐに人夫の手で館内から外へ運ばれました。