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とうぎゅう
闘牛
国枝 史郎
「新趣味」1922(大正11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,976 字 · 20 页
いかに闘牛とは云い乍ら、理由が無ければそうそう人へ突っかかるものではございません。そこで感付いたのでございます。
「扨は『サラセンの耳飾』はこの闘牛が呑んでいるな。不消化物を呑み込んで気持が悪いのでこのように人に突っかかって来るのだろう」
処が、耳飾は胃の腑には無くて、胃の腑よりも神経の鋭い耳の中に在ったのでございました)
手紙は此処で三転して、宮相に別れを告げている。
(宮相閣下、では私は、これでお別れを致しますが、併し、お別れに臨みまして、重大な事件をもう一つお耳に入れたいと存じます。即、それは、甥御様が、此世にいないと申すことで、閣下も御覧でございましたろうが、一人うら若い闘牛者が、宮廷闘牛の角に突かれて、そのまま死んで了いましたが、その死んだ若い闘牛者こそ閣下の甥御でございます。
それにしても甥御が変装して、闘牛場へわざと出て行かれて、角に突かれて何故死なれたかと、閣下には審しく思われましょうが、それは甥御にこの私が謎をかけたからでございます。「侍従!」と私はまず甥御を、人の居ない所へ誘いました。「豚に真珠を呉れたところで豚は喜びもしますまい! 牛に耳飾を呑ませたところで牛は吐き出して了いましょう」