轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あなんとじゅじゅつしのむすめ

阿難と呪術師の娘

岡本 かの子

「読売新聞」1928(昭和3)年5月6日~6月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 页

青空文庫

(彼女は自分の心験をいかに云い表わそうかと考えを纏めるらしく瞑目して)阿難さま。今となりましてわたくしは、人の世の男と女がどうしてあの程度の愛で満足出来て居るか、不思議でならないので御座います。如何に愛し合って居る男女でも、刹那々々の気分の動きがその純情に不純の礫を混じえぬと、どうして云い切ることが出来ましょう。またいかに信じ合って居る男女にしても、ひょっとした夜の夢に他の男女の俤が、一度も現われて来ませぬと誰が証言出来ましょう。自分自身でさえどうしようもないので御座います。ましてや五六十年の長い生涯、愛し合った始めの熱情に少しの弛みを与えずそれを持ち通す時間というものは、いくらあるで御座いましょう。阿難さま。それに第一、人の世の男女の愛というものは、必ず「自我」という殻を冠って居ります。男女が互に自分の殻を破り捨てて、無条件の愛の恍惚に融合うということは、滅多に無いので御座います。大概は自分はちゃんと殻を冠ったまま、相手だけの殻を破らせて、自分の勝手な愛のなかへ相手を取込めようとしたがるものなのです。

阿難さま。あなた様は人の世の恋人同志が、月の夜の木蔭に寄り添うて語り交す、蜜のように甘い言葉をお聴きなされたことがおありですか。