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いんてんにほんがしょかん

院展日本画所感

和辻 哲郎

「中央美術」1919(大正8)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,096 字 · 10 页

青空文庫

昔の和歌に巧妙な古歌の引用をもって賞讃を博したものがあるが、この種の絵もそういう技巧上の洒落と択ぶ所がない。自己の内部生命の表現ではなく、頭で考えた工夫と手先でコナした技巧との、いわばトリックを弄した芸当である。そうしてそのトリックの斬新が「新しい試み」として通用するのである。

目先の変更を必要としないほどに落ちついた大家は、自己の様式の内で何らか「新しい試み」をやる。主として画題選択の斬新であるが、時には珍しい形象の取り合わせ、あるいは人の意表にいづるごとき新しい図取りを試みる。しかしこれらの画家を動かしているものは、岡倉覚三氏の時代の自然観、芸術観であって、その手腕の自由巧妙なるにかかわらず、我らの心に深く触れる力がない。

文展の日本画を目安にして言えば、確かに院展の日本画には生気溌剌たる所があるかも知れない。しかし我々の要求するのはこの種の技巧上の生気ではない。奥底から滲み出る生命の生気である。この要求を抱いて院展の諸画に対する時、我らはその人格的香気のあまりにも希薄なのに驚かされる。たまたま強い香気があるとすれば、それはコケおどしに腐心する山気の匂いであり、筆先の芸当に慢心する凝固の臭いであって、真に芸術家らしい独自な生命燃焼の匂いではない。