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かいだん
階段
海野 十三
「新青年」博文館、1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,588 字 · 32 页
たとえそれは泥がついていなくとも、リノリュームの脂かなんかがきっと表面に付着するだろう。それを反射光線を使い顕微鏡で拡大すれば吃度足跡が出るに違いない。僕は科学者らしいこの方法に得意であった。
翌日僕は研究所内が最もだれきった空気になる午後三時を見計ってソッと三階へ上った。兼ねて目星をつけて置いた例の本を抜きとると上から三段目の階段へ載せた。何くわぬ顔をして下へ降りて来ると、誰も居ないと思った二階に四宮理学士が突立っていたので、僕はギクッとした。
「古屋君、君はあの事件で僕を疑っているようだったが、君もあまり立ち入った行動を慎んだがいいですよ」と彼はいつになくニヤニヤと笑ってみせた。
「貴方こそいつも此の室でなにをして居られるのですか」と僕はつい逆腹を立てて言いかえしたが、後で直ぐ後悔した。
「君には言ってもいいんだが、曲馬団の娘なぞと親しくしているようだからうっかりしたことはまだ言えない」
「曲馬団の娘?」僕はなんのことだったかわからなかった。
「曲馬団の娘って誰のことです。言ってください」
「まアいい。君が冷静であるなら言ってもよいのだが、実は古屋君。所長を殺した犯人はもう解っているのだよ」