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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

純情だの、失恋などと、なまやさしいことではない。浜子などに、いったところでわかるものかと音枝はひそかに力んだ。

浜子はほんとになかなかもどってこない。それでも父や母の手前を、できる限りかばってやろうとしているのに、音枝のそんな心づかいなどおかまいなしで、そとが暗くなってもかえらないのだ。わざと三十分おくらした夕食のぜん立てをしていると、まっさきにはいってきた文吉が、

「浜ちゃん、どうした?」

音枝はすこし不きげんに、

「公休日よ。」

つづいて安江が座につきながら、

「おそいね、浜ちゃん。」

すると音枝はへんに突っかかる調子で、

「いいじゃないの。たまのお休みですもの。」

すると今度は、外で遊んでいた夏樹をよびにいった冬太郎が、夏樹と一しょにきゃあつくさわぎながらかけこんでくるなり、

「浜ちゃんは?」

音枝はきゅっとまゆをよせ、

「みんな、かまうのね浜ちゃんを――」

「かまやしないよ。いないから聞いたんじゃないか。」

不服に口をとがらした冬太郎は、つづけて、

「きょう学校の帰りにさ、友だちと一しょに銀座へ出たんだよ。そしたら四丁目で浜ちゃんみたいやつに出あったからさ――」