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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

「ヤツとはなあに。」

ぎくっとしたのをかくして少しきげんよくいう音枝の気もしらずに、

「ヤツだっていいよ。浜ちゃんじゃなかったもの。男の人と腕くんで、すまあして歩いてやんの。ぜんぜん似てたよ。」

「へえ。でもそれ……」

人ちがいだろうといおうとしたのだが、今度は安江がそれをさえぎった。

「ごはん、ごはん。ぺこなんだよ。」

音枝は何かを感じてだまった。

「浜ちゃんなんて、ぼくだーいきらい。いない方がいいよ。ね、おかあさん。」

夏樹までがそんなかまいかたで一人前らしくいい、そしてしかられたあとは、もうみんな忘れたようにはしを動かした。しかしいつもとちがって何となく座がしらけているのは、女たちがそれぞれ気もちにわだかまるものをもっているからだと音枝は思った。一家が一しょに食事をするのは夕食だけなので、一日の笑い声もこの時におこる。それなのに、第一安江がだんまりでいるのは何となくこわい。案の定食事がすむと、安江は男たちの去るのをまっていった。

「浜ちゃんもどったら、すぐわたしの部屋へよこして。」

「はい。」

「よけいなこといわずにね。」

そんな母に音枝は何となく反感をもった。