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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
「…………」
「ね、世の中を見まわしてごらんなさいよ。」
当然同調してもらえると思っていた二三子はびっくりしてしまった。小説家だなんていってるくせに、なんて古くさい、ありきたりの、そのば限りをいうのだろうとあきれた。それは安江などにいわれなくても、世の中が悪いぐらい二三子にもわかっている。しかし父のように、デフレデフレと、何もかもデフレのせいにしたってはじまらないではないか。そんな世の中だからこそ一家離散もしようというのだ。それなのに安江は、よく知りもしないで、甲斐性なしの父に同情し、
「なんといっても、あなたのおとうさんですからね。そのおとうさんをおっぽり出してどうなるの。」
しかもそのあげく、古着を出して包んでくれたのだ。母への羽織と、音枝のらしい新しい半そでのセーターだった。それも腹が立った。下町っ子だと自認している二三子には、音枝なんぞと好みがちがうという誇りもあった。そのくせ、セーターは結構まにあって今もそれを着ている。その時のことを思い出しながら、
「おとうさん、中野なんかへいってると、ろくなことないわよ。」
あがりがまちに腰かけて靴をはいていた兵六さんは、さすがにむっとした。