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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

やみねなりの正値だった。進君はにこにこして、

「すみません。たすかりました。じゃあ、もってきます。」

だが米はきょうの一キロだけだった。

「あら、ひどい。これ、五升?」

思わず大きな声を出した。

音枝のなじる口調に、さすがの進君も赤くなり、またまた、耳のうしろをはげしくかいた。音枝は半分のおかしさに、甘く見られた腹立ちをも適度にこめて、

「どうしたの、これが五升?」

「いえ、ぼく、これからの配給でとってもらおうと思って。」

「じゃあ、はじめっからはっきりいいなさいよ。」

「いったつもりですけど。」

「聞きませんよ。」

「じゃあ、この一キロ分だけにして、百円おかりしましょうか。」

「いいわよ。苦学生のあんたから、もうとりかえせないわ。――どうも話がよすぎると思った。だって、アルバイトの口がふえたの、二三日前じゃないの。いやあね。」

音枝のきげんがなおったとみて、進君は早々に引きあげた。そのあとを音枝はおっかけるようにして、彼の部屋をノックしながら、

「ちょっと、進さん。」

「はい、すぐあけます。」

そういわれて気がついたことだが、まだ時刻は早いのにもうドアにはかぎがかかっていた。