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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

「浜ちゃんのこと、冬太郎には当分いわんとおき。」

とんとんとんとはしご段をおりてくる足音を聞くと、安江はいそいで御不浄へはいった。今度は冬太郎が、こしょこしょっと音枝にささやく。

「おふくろのごきげん、引きうけたよ。帰りに花屋へでもつれてって、タイガーでアイス・クリームぐらい買わせるよ。」

その両方にうなずいて、音枝はひとり留守番になった。やはり浜子のことは心を去る瞬間もなかったが、思いわずらってみても、どうにもならなかった。どうせ浜子のことだ、あすあたり、けろりとして帰ってくるだろうとでも考えないとたすからなかった。ふたりをおくり出すと、かるいいびきをかいている夏樹のそばで、つづけて音枝はそい寝をした。ねながら音枝の胸を去来するのはやはり浜子のことである。たった今あきらめたばかりなのに、どうしてこう、ついて離れないのか。――しかし音枝もいつのまにかうとうとしていたらしい。

「だれも、いないのかね。」

玄関に文吉の声を聞くと、思わずはね起きはしたものの、いつものような顔になかなかなれなかった。食卓に向いあってビールをつぎながらも、むっつりしていると、文吉は、