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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
親方に預けてある貯金通帳が、夏樹の名前になっている。たったそれだけの内しょごとが、時には彼をささえ、時にはいつまでも帰らぬおせいや二三子への腹いせともなって彼をなぐさめた。
とはいえ、兵六さんだとて、やはりおせいは長年つれそった女房であり、二三子はふたりの血をわけた娘である。わが家が近くなるたびに、まっさきに思うのは今日こそは、おせいか二三子が帰ってきてはいまいかということだった。だが、いつも部屋はまっくらで、待ってくれるのはしめきって動かなかったなまぬるい空気だけだった。
その変化のない兵六さんの部屋に、ある日、珍らしく灯がとぼっていた。障子もあいていて人かげがみえる。
「おせいか?」
軒下に車をかたづけながらの兵六さんの声は疲れを忘れていた。くすっと笑う声がする。若い。
「なんだ、二三子か。」
またくすっときた。喜びを押えながらわざとゆっくりとゲートルをとっている兵六さんの背に、思いがけない声がとんできた。
「おじさん。」
浜子であった。兵六さんはすっかり動転して、急にどもり出した。
「お、お、お前か。お安さんとこのさ、な、なんてったかな、ほれ、お、お安さんとこのさ。