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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
出がけに電話かけとく。」
文吉にも電話をして、目黒の駅で落ち合って、都合によっては浜子をどこかの病院へ入れてくると安江はてきぱきといった。出かけるのを門のそとまで見おくった音枝は、母の小びんのしらががふえたのを今更のようにながめながら、人の子のためばかりに苦労をかけられていることを思って涙ぐんだ。そして、ふうと、四五日前の夜のことを思い出していた。ことの起りは進君だった。あれ以来進君は家のたれにも口をきかず、今は夏休みで郷里の高松へ帰っているが、十日もたつのにはがき一枚よこさないのだ。それについて文吉が、浜子のこともからめて、
「まったく、この節は忘恩人種がふえたよ。人の世話もいいかげんにしとかんとな。」
その口にふたをするような調子で、安江は子供らを意識しながら、
「よしなさいおとうさん、何も、恩にきてもらうためにしたことじゃないんですもの。」
すると文吉は急に声を荒らげ、
「おれは恩にきてもらいたいんだ。五年も七年もただで置いてやって、はがき一枚の恩も求めちゃあいけないのか。てめえひとりいい顔しやがって。」
「そうよ、わたしはいい顔したいの。」
「ああ、お立派だよ。