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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
だまってしまった安江を、今度はおどろかさねばならない。
「うちは、大変なのよ。どろぼうがはいったの。」
「何だって。なにやられた。」
と、文吉が大声を出した。安江はぬぎかけた着物にまた手をとおし、前でたくしあげながら、
「いやなの。どうしたっていうのさ。」
音枝は仕方なく苦笑しながらビニールの包みをつまむようにしてもってきて、
「それがね、おかしなどろぼうよ。」
置きみやげをしていったことを話すと、安江は冬太郎のもってきた冷たい番茶を一いきにのんでから、
「おかしいね、そりゃあ。浜ちゃんじゃないのかね。だれもいないんで、しかし自分のものだから持ってったんだろ。」
「それなら一筆書きおいてゆくでしょう。おとなりへことづけだってできるわ。」
「それも、そうかね。」
「おとなりで聞いてこいよ。」
と、文吉は気ぜわしい。
「聞いたのよ、もう。――交番へ届けましょうか。もちあみだの、さいばしだの、気味がわるいわ。」
何かこわいものででもあるように、ビニールの包みをみながらいう音枝に、安江は落ちついて、
「まあおまちよ。どうもおかしいよ。やっぱりこりゃあ、浜ちゃんだよ。浜ちゃん、身軽になって、仕事がみつかって、部屋でも借りたんじゃないかね。