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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
」
文吉つぁんでなく、くんづけでいったのがあやしいと思いながら安江はだまって夫のそばへすわった。その妻の肩に手をおいて文吉は、
「かんべんしてくれ。」
「ええっ!」
安江は思わず肩をはずして向きあった。
「しようがなかったんだ……」
「もらうつもり? あきれた!」
「一か月だけだよ。それもいやとはいえんじゃないか。」
「でもわたしはいや。――だからあんたはお人よしだといわれるのよ。」
ぷいと立って安江は表へ出た。
そんな次第でやってきたのが音枝である。
あの日ぷいと外に出た安江は、得体の知れないくやしさでぎりぎりしていた。女の立場を無視されたというようなはっきりした意識は当時の安江にはまだなかった。ただ何となくくやしいのである。子供なんかほしくないのに、それを無理やり押しつけようとする、それへの反抗だったかもしれない。
――勝手にするがいい。わたしは責任ないんだから……赤ん坊も文吉が世話すればいい。夜もだいてねればいい。私は知らないから――おしめの洗たくも文吉がすればよい。赤ん坊なんて、たくさんだ。どんなに大変だか、ひとりむすこの文吉なんて知りっこないんだ。