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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
こんがらかったことで安江は思わずふふっと笑う。市場のそばを通っていた。市場の建物のはずれで、大道に花屋が店をひろげていた。
「奥さん、安くしとくよ。買ってくださいよ。」
安江はふっと立ちどまって花をながめた。名も知らぬいろんな花がたくさんならべてある。知っているのは菜の花だけだ。町では菜種の花が売られている。
――えい。やけくそで花でも買っちゃえ――
いなかから出てきてはじめて安江は花を買ったのである。どれが安いのか見当がつかない。
「菜種を十銭くださいな――」
自信のある顔でいうと、花屋は、
「えい、まけちゃえ。」
と、全部をつかね出した。一とかかえもありそうに見えた。
こんなたくさん菜の花ばっかり買う人があるだろうか――
安江は内心きまり悪がりながら帰っていった。家の近くまでくると、赤ん坊の泣き声がきこえた。留守の間にもう赤ん坊はきていたのである。それにしても早すぎると思いながらはいってゆくと、兵六さん夫婦が少し具合の悪そうな顔で迎えた。
「ほらほら、おかあちゃんがお帰りですよ。あんたのために、お花買って歓迎してくれてるのよ。」
兵六さんのおかみさんは赤ん坊をゆすぶりながら、あいさつ代りにそんなことをいった。