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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
」
安江はほんとに涙ぐんでそういった。赤ん坊を重荷に思っていることをわびる気持だった。事実、赤ん坊のミルク代はもらったとしても、赤ん坊が来て以来、自分たちの生活のための内職はまったくはかどらなくなっている。(文吉は辞書などを作る下うけ原稿を書いていたのだ)そのために文吉は気むつかしくなり、安江は気がおもる。もしこれが、安江も賛成の上であずかった子供であったなら、不服をなげつけあって発散することもあるだろうが、自分が賛成しなかったことで安江は逆にものがいえなかった。彼女は赤ん坊を泣かせまいとして、朝から晩までおぶっていた。文吉が仕事をしている時には夜中でもおんぶして外に出たりする。おぶえば自然にからだがゆれる。
ねんねしゃっしゃりませ
あすおきなされ
あすは音枝ちゃんの誕生にち
誕生にちにはあわに米まぜて
あいにゃササゲもトトまぜる
郷里のそんな子もり歌も口に出てきた。昔無意識に歌っていた子もり歌がちがった気持で彼女の心をとらえる。
誕生にちにはあわに米まぜて
あいにゃササゲもトトまぜる
乏しい百姓のそれは歌だった。あわが常食の百姓たち、それが子供の誕生日には米やささげをトトまぜて祝おうというのだ。