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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
安江は居たたまらぬ思いがした。それで、仙造だけのときに、自分から買って出たのである。
「ね、もしもその方がよかったら、冬太郎ちゃんは私にあずからしてもらえませんか。私は産まずですけど、音枝を育てた経験もありますし、それに、冬太郎は小萩の形見でもありますし……」
そういって安江が泣くと、仙造も一しょに男泣きに泣きながら、
「すんまへん、おたのもうしますワ。助けておくんなはれ――」
安江が東京へ帰ったのはそれから五日目の朝だった。世田谷の奥から出迎えてもらうにはあまり早い時間では音枝も困ろうかと思い、神戸はわざとおそいのにのった。ニモツアルムカエタノムと書いた電文を、オミヤゲアルと書き直してうっておいて彼女はひとり微笑した。彼女の背には冬太郎がいたのである。
――どんなにびっくりするだろうか。文吉も音枝も。しかし音枝はよろこぶにちがいない。文吉だとて、おこりはしまい……。
大きな包みを両手にぶら下げてプラットホームに下り立つと、安江は左右を見回した。三輛ほどはなれたところを文吉が音枝の手をひいて、こっちへ歩いてくる。車内をのぞいているので安江の姿に気がつかないらしい。