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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
気がついたとしても、安江だとは、すぐには思えないかもしれない。ねんねこ姿の安江はにこにこしながら背の子をゆすぶり、わざと夫や音枝の近づいてくるのをまった。しかしそばまできても気がつかず、ふたりは安江をよけて通ろうとする。
「音枝ちゃん!」
びっくりして見上げる音枝に、
「はい、おみやげ! 冬太郎ちゃんよ。」
文吉も一ときはあきれたようだったが、
「なんだ。こんなことだと思ったよ。」
家へ近づくと玄関の前に兵六さんが立っていた。ははあと思ったが文吉に聞く間もなく、安江は笑顔をみせた。やすやすと笑顔なんかみせる場合でないと、心のどっかにささやく声があるのに、つい笑顔になり、しかもなつかしそうに走りよって、
「まあ珍らしい鷲さん、すぐあけますから。」
しかし兵六さんの方もびっくりしている。音枝の大きくなったのは当り前だが、背中の子はいったいいつ生れたのだろうと思っているのだ。ねじかぎをあけている安江の背の子にあごをしゃくりながら、
「いつできた?」
と、文吉に聞いた。それを安江はうけて、
「きょうできたのよ。きょうからうちの子よ。」
まっ正直にいったあとで、産んだといってちょっとぐらいかついでもよかったと思ったりした。