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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
――なにしろまあ、長坂という男はケチで、胸糞の悪い男ですよ。人をただで走りまわらして何とも思わないんだからね。ここへだって、あいさつなかったんでしょう。」
安江はむっとして、
「鷲さん、いっときますけど、私たちを長坂さんに会わさなかったのはあんたですよ。私は長坂なんていう人から音枝をたのまれたんじゃないんですもの。鷲兵六という人から、八年前に、一か月という約束で――そうだわ。私がいない間に文吉と話をつけたのよ。文吉つぁん、あんた、なんとかおっしゃいよ!」
疲れもあって気が立ったらしく安江が泣きだしたので兵六さんはあわてて前言をとり消した。そして今度は手の裏をかえしたように、
「なんなら、音枝ちゃんを引きとってくれるように長坂に話しましょうか。わしもこうなったら乗りかかった舟じゃ、解決しましょうじゃありませんか。ちょうどいい機会ですわ。新しい赤ん坊もきたしというわけで――生れたといってもいいな。学校にゆくまでに渡そうじゃありませんか。」
「…………」
「いつまでもかくしとけるものじゃなし、長坂の奥さんだって、もうわかったからといってとび出したりする心配はありませんよ。