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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

が、小萩のことを思うと冗談はひっこんだ。かいつまんでことの次第を語ると、さすがの兵六さんも、

「へえ、そいつは気の毒だね。――ふーん。それにしてもあんたはまあ……」

「お人よしだとおっしゃるんでしょう。」

「いやあ、感心しとるところじゃ。偉いと思て。」

「そんなら兵六さんが偉くしてくれたのよ。――」

冬太郎はよく眠っていた。なれた手つきでとなりの部屋の、まだ敷きっぱなしのままのふとんに寝せると、安江はあらたまって兵六さんの前に手をついた。

「どうも、ごぶさたいたしまして。」

「いやあ、そういわれると面目ありませんわ。――それにしても、神戸は、大変でしたなあ。ちっとも知らなんだもんで、どうも。」

やっぱり彼は音枝のことで来たのであった。文吉の手紙であわてて長坂にあって相談したり、戸籍抄本をとったりしていておそくなったとわびをいい、ふところからその抄本をとり出して文吉の前におきながら、

「どうぞ、よろしゅお願いします。それと、わしはもうこれをきりに手を引かしてもらいますわ。これからは、用があれば直接長坂の方へ手紙なとなんなというてやってください。わしもこれで、結構せわしいてな。