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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
さすがになつかしそうに音枝のことをたずねたあと、
「長坂の方は不幸つづきでね。むすこは少年航空兵で戦死するし、嫁は肺病になるし、家は焼かれるし、あんじょうワヤじゃ。ばちがあたったともいえないしな。」
あわただしくゆきかう人々に肩や背中を小突きまわされながら、それだけ聞いただけで安江のからだは電車の中に押しこまれていた。兵六さんはもうみえなかった。
終戦翌年の、それは新緑のころだった。時代の風潮でやたら胸をはり、のけぞって歩く人間がふえた中で、安江たちもまた彼女たちなりの希望にもえ、時には若やいだ気持で夫婦つれだって出かけたりした。その日も、ふたりそろって属している文学団体の集会があって、夜おそくわが家へ帰った安江は、音枝が町の青年たちの集会から戻ってくるときの、あのはりのある声をまねて、玄関をあけるなり、
「ただーいまっ。」
大声で呼びかけると、留守番の音枝がとび出してきて、にこにこしながら、
「お帰んなさい。きょうは、いいものがあってよ。」
「何だ。食うものだろう。」
文吉の方がすぐとびついていった。安江も笑いながら、
「当てようか。あたったらおかあさんに特配するね。