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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

思いがけないというよりも、日がな毎日、きょうはきょうはと待たされて、待ちくたびれて、憤慨しながらあきらめかけていたところへ、彼はまるで、おりを得たような顔つきをして現れたのである。鳴っていた腕っぷしもなえようというものだ。その虚をつきでもするように、兵六さんはいんぎんに両手をつき、

「どうもどうも。つい心やすだてにご無礼いたしました。」

むっとしている安江に、兵六さんは立てつづけて、

「進君から話を聞きましてな、今、あんたの物語を一席していたとこですよ。お安さんという人は、昔から実にできた人だといってね。」

「おだてるのね、相変らず。」

「いやあ、ほんとですよ。わしは、実に何というか、ここの家との妙ないんねんにおどろいとるところですよ。音枝ちゃんはこりゃ、当り前だけどもさ、冬太郎くんでしょう、そしてきょうでしょう。ここの家へ赤ん坊が来た日には、必ずわしが、まるで立会人かなんぞのように三度が三度、ここへ来る回りあわせになる――」

「そういえば、そうだわ。あら、変ね。ふしぎね。三度が三度なんて、なんでしょう。奇縁ていうのかしら。」

恨みがましさも忘れて安江はつい許す気になり、