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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

」

「あきれた。あんたそんなお金、どこにあったの。」

「たもとの底にあったよ。」

にやっとする文吉に、安江はくってかかる調子で、

「いやだわ。男のくせにへそくりなんて。――そのお金、もうもどってなんかこないわよ。わたしに相談もしないでさ……」

とはいっても安江だって斎木少年のへやの権利金のことはいまだに夫にかくしている。とはいえそれは、こうして斎木少年が居ついた以上当然払ってもらうべき性質のものをもらっていないだけのことで、直接ふところなり、たもとの底から出されたものではない。それを彼女は、文吉の手前、もらったようにいってしまったのだ。それはまた半分は、進君と呼び方もきまって一しょに住むことになった以上、夫と進君との間を円滑にしてゆきたい安江の気弱さでもあった。そういう事情をさとった兵六さんはうまくそれを利用し、文吉のいる前ではミルク代も大っぴらにうけとりながら、恩きせがましいことまでいったものだ。

――わたしの手にはいる元価ですからな。わたしは一文ももうけちゃあいませんよ。ええ、びた一文だって、ここの家からもうけようとは思っちゃいないんです……

しかし兵六さんが来なくなってみての安江のむな算用では、どうやら文吉のへそくり分ぐらい引っかかったことになる。