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ざっとう
雑沓
宮本 百合子
「中央公論」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,832 字 · 50 页
紅茶を半分も飲んだ頃、これで一息落付いたという風で、瑛子は、
「どうだったの?」
改めて娘の顔を見た。
「別に変りはなかったんだろう?」
そして、ベージュ色に細い赤線をあしらった地味なスウェータアに包まれている宏子の胸のあたりを眺めまわした。
変に幅のひろいような、ねばっこいようになったその視線を散らそうとするように宏子は覚えず身じろぎした。
「私の方は相変らずだわ。こっちはどう? 順ちゃんは?」
「ああ、あの人は相変らずでね」
二重瞼の切れ長な瑛子の眼ざしは再び変化した。東京高等の学生である次男の噂をする時にだけ現れる熱心な、愛着の色が燦いた。
「本当に、純真な人だ。――この頃はドイツ語の勉強で、よくやっているよ。夕飯にはかえるはずだけれど……」
「達ちゃん手紙よこして?」
「ああこないだ順二郎のところへハガキをよこしたようだよ、仙台辺はもう大分朝晩さむいらしいよ」
欠伸にならない欠伸を歯の奥でかみころしながらのような声の調子で、瑛子は、
「あのひとは、何ていうんだか、熱がないっていうものか、何しろ電気一点張りなんだから」
と、長男のことを云った。
鶴見の総持寺に在る墓地には、加賀山の四人の子供が祖父母の墓のよこに並んで埋められていた。