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ざっとう

雑沓

宮本 百合子

「中央公論」1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,832 字 · 50 页

青空文庫

人為的人間。宏子は日頃そう思って、自分から進んで会おうとさえしなかった。寧ろ軽蔑を感じているものに、瑛子が、惹かれているように見える。そして、父の留守の父の誕生日に来ている。宏子には、それも苦しいのであった。しかも、この心持を、田沢が知ったら、蒼白い頬を歪めて、それは宏子さんが何と云っても嫉妬しているのです、と穿ったように云うであろう。宏子は二重に腹立たしかった。

硝子戸をあけようとすると出会い頭に、

「おや、姉ちゃん来てたの」

入って来たのは、順二郎であった。

「――順ちゃんいたの?」

「いたさ」

「どこに」

「僕の部屋に――何故?」

「田沢さんが来てる」

「ふーん……僕ちっとも知らないよ。――なアんだ、そうか」

と云った。食卓の仕度が出来ていた。大きいテーブルの上へ、二人分だけ寂しく片すみによせて並べてある。宏子と順二郎とはそれを見おろして、何となくそこへ突立ったままであった。

「お母様はどうなさるの?」

宏子がそこにいる女中にきいた。

「さあ」

「伺っといで」

戻って来て、

「お客様とあちらで召上りますそうです」

順二郎が、ふっくりした素直な顔の上に乱れた表情を浮べ、姉を見た。