轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ざっき(いち)

雑記(Ⅰ)

寺田 寅彦

「中央公論」1922(大正11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,568 字 · 33 页

青空文庫

パナマらしい帽子にアルパカの上衣を着て細身のステッキをさげている。小さな声で穏やかに何か云っていたが、結局別に新しい切符を出して車掌に渡そうとした。

二人の車掌が詰め寄るような勢いを示して声高にものを云っていた。「誤魔化そうと思ったんですか、そうじゃないですか。サア、どっちですか、ハッキリ云って下さい。」

若い男は存外顔色も変えないで、静かに伏目がちに何か云いながら、新しい切符を差し出していた。車掌はそれを受取ろうともしないで

「サア、どっちです。……車掌は馬鹿じゃありませんよ」と罵った。

私は何だか不愉快であったからすぐに立って車を下りた。

あの若い立派な男がわずかに一枚の切符のために自分の魂を売ろうとは私には思いにくかった。しかしそれはどうだか分らない事である。

それにしても私はこの場面における車掌の態度をはなはだしく不愉快に感じた。たとえ相手の乗客が不正行為をあえてしたという証拠らしいものがよほどまでに具備していたにしても、人の弱点を捕えて勝ち誇ったような驕慢な獰悪な態度は醜い厭な感じしか傍観している私には与えなかった。ましてそれが万一不正でなくて何かの誤謬か過失から起った事であったら果してどうであろう。