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ざっき(に)
雑記(Ⅱ)
寺田 寅彦
「中央公論」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,640 字 · 14 页
それがどんな花であっても純白の卓布と渋色のパネルによくうつって美しかった。ガラス障子の外には、狭い形ばかりの庭ではあるが、ちょっとした植込みに石燈籠や手水鉢などが置いてあった。そして手水鉢にはいつでも清水がいっぱいに溢れていた。
ボーイはただ一人で間に合っていた。それは三十を少し越したくらいの男であった。いつでもちゃんとした礼装をして、頭髪を綺麗に分けて、顔を剃り立てて、どこの国の一流のレストランのボーイにもひけを取らないだけの身嗜みをしていた。
何もこの男に限らない事ではあるが、私はすべてのレストランのボーイというボーイの顔のどこかに潜んでいるある特別な表情を発見する事が出来ると思う。それは何と形容してよいか分らない。例えば従順と倨傲と、あるいは礼譲とブルタリティと、二つの全く相反するものが互いに密に混合して、渾然としたものに出来上がったとでも云ったらよいか。これが邪魔になって、私はどうしてもこの階級の人達に対して親しみを感じる訳に行かない。
それでも永い間の顔馴染になってみれば、やはりそれだけの心安さは出来た。外に客の居ない時などには、適には世間話の一つもする事はあった。