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おしゃく

雛妓

岡本 かの子

「日本評論」1939(昭和14)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,482 字 · 53 页

青空文庫

「そうお、そんなにすらりとした女に思ってたの」と言うときわたくしの親しみの手はひとりでに雛妓の肩にかかっていた。

「お座敷辛いんでしょう。お客さまは骨が折れるんでしょう。夜遅くなって眠かなくって」

それはまるでわたくしの胸のうちに用意されでもしていた聯句のように、すらすらと述べ出された。すると雛妓は再び幼い商売女の顔になって、

「あら、ちっともそんなことなくてよ。面白いわ。――」

とまで言ったが、それではあまり同情者に対してまともに弾ね返し過ぎるとでも思ったのか、

「なんだか知らないけど、あたし、まだ子供でしょう。だから大概のことはみなさんから大目に見て頂けるらしい気がしますのよ。それに、姐さんたちも、もしまじめに考えたら、この商売は出来ないっていうし――」

雛妓は両手でわたくしのあいた方の手を取り、自分の掌を合せて見て、僅かしかない大きさの差を珍らしがったり、何歳になってもわたくしの手の甲に出来ている子供らしいおちょぼの窪みを押したり、何か言うことのませ方と、することの無邪気さとの間にちぐはぐなところを見せていたが、ふと気がついたように逸作の方へ向いた。