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おしゃく
雛妓
岡本 かの子
「日本評論」1939(昭和14)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,482 字 · 53 页
川幅の大半を埋めている小石の大河原にも若草の叢の色が和みかけている。
動きの多い空の雲の隙間から飴色の春陽が、はだらはだらに射し下ろす。その光の中に横えられたコンクリートの長橋。父が家霊に対して畢生の申訳に尽力して架した長橋である。
父の棺輿はしばし堤の若草の上に佇んで、寂寞としてこの橋を眺める。橋はまた巨鯨の白骨のような姿で寂寞として見返す。はだらはだらに射し下ろす春陽の下で。
なべて人の世に相逢うということ、頷き合うということ、それ等は、結局、この形に於てのみ真の可能なのではあるまいか。寂寞の姿と無々の眼と――。
何の生もない何の情緒もない、枯骨と灰石の対面ではあるが、いのちというものは不思議な経路を取って、その死灰の世界から生と情緒の世界へ生れ代ろうとするもののようである。わたくしが案外、冷静なのに、見よ、逸作が慟哭している激しい姿を。わたくしが急いで近寄って編笠の中を覗くと、彼はせぐり上げせぐり上げして来る涙を、胸の喘ぎだけでは受け留めかねて、赤くした眼からたらたら流している。わたくしは逸作のこんなに泣いたのを見るのは始めてだった。わたくしは袖から手巾を出してやりながら、