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あめのひる
雨の昼
宮本 百合子
「中央公論」1939(昭和14)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,119 字 · 9 页
母のジェニファーは、ほかならぬ女相手のしかも衣裳屋として成功し、立派な店をも持っているからには、純情であろうと十分この世の良識はそなえている筈ではないだろうか。二人の娘たちに対して、受け身に、曖昧に、謂わばイレーネに見つけられたという工合でのモメントにおいて、自分の恋愛や結婚を語らないでも、もっと本当の愛情からの娘たちへわからせてゆく知慧の働きはあったと思う。働いて、たたかって、そして子供らを愛して来た女は、それだけのものをいつしか身につけているのではないだろうか。お祖母さんがそのものわかりよさで、好評を得ているようである。それもわかると思う。云わばこの太った白髪のお祖母さんとババだけが、こんがらかりの中で正気な心持でいる人たちなのであるから。イレーネが気ちがいじみた程の様子でコルベット卿にこの家から出てゆけと云ったのを知って、母のジェニファーは、子供のためにその結婚を断念しようとする。その懊悩を眺めて、お祖母さんは、ジェニファー、そんな苦痛が堪えられるものではありませんよ。一生のうちにはひとの思惑など考えずに決心しなければならないときがある。今がおくれればお前の一生は、とりかえしがつかない。