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ゆきくるまえのこうげんのはなし

雪くる前の高原の話

小川 未明

「童話」コドモ社、1926(大正15)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,024 字 · 10 页

青空文庫

」と、はちは答えたのであります。

さびたくぎは、なるほどというような顔つきをして、はちのいうことを聞いていました。

はちが、やがて、赤いつたの葉の上にもどってきました。つたの葉は、空を見上げながら、

「また、あらしになりそうですね。」と、心配そうな顔つきをしていました。

ひとり、すぎの若木は、傲慢に、強そうなことをいっていばっていたのであります。

赤さびのしたくぎは、はちのいったことから、つい気がゆるんでレールを押さえつけていた手を放しました。すると、レールは、すかさずに、曲げていた体を伸ばしたのです。このとき、トロッコが、ほかの石炭を積んで山から下ってきました。つたの葉の上にとまっていたはちは、先刻の石炭は、いまごろどこへいったろう……。町の工場へは、まだ着くまいと思っていた瞬間に、トロッコが脱線して、異様な音をたてたかと思うと、こちらへすべってきてすぎの若木のかたわらにひっくり返ったので、すぎの若木は石炭に押されて曲がってしまいました。ふいのできごとに驚いて、はちは前後を忘れて、かなたの大きな、はんのきのところまで逃げてしまいました。

その晩、真っ白に、この高原には、雪が降ったのであります。