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ゆきくるまえのこうげんのはなし

雪くる前の高原の話

小川 未明

「童話」コドモ社、1926(大正15)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,024 字 · 10 页

青空文庫

それは、険しい山のふもとの荒野のできごとであります。

山からは、石炭が掘られました。それをトロッコに載せて、日に幾たびということなく高い山から、ふもとの方へ運んできたのであります。ゴロッ、ゴロッ、ゴーという音をたてて石炭を載せた車は、レールの上をすべりながら走ってゆきました。そのたびに、箱の中にはいっている石炭は、美しい歯を光らしておもしろそうに笑っていました。

「私たちは、あの暗い、寒い、穴の中から出されて、この明るい世界へきた。目にうつるものは、なにひとつとして珍しくないものはない。これから、どこへ送られるだろう?」と、同じような姿をした石炭は語り合っていました。

だんまり箱は、これに対してなんとも答えません。むしろ、それについて知らないといったほうがいいでありましょう。しかし、レールは、そのことをよく知っていました。なぜなら、自分の造られた工場の中には、たくさんの石炭を見て知っているからであります。いま、石炭がゆく先をみんなで話し合っているのを聞くと、ひとつ喜ばしてやろうとレールは思いました。

「あなたがたは、これから、にぎやかな街へゆくのですよ。