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ゆきくるまえのこうげんのはなし

雪くる前の高原の話

小川 未明

「童話」コドモ社、1926(大正15)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,024 字 · 10 页

青空文庫

はちたちがいたるところの花にとまって、倦まずにみつを集めている間に、太陽は高く上がりました。そして、トロッコの音がしてレールの上が熱くなり、銀のように白く光る風が、高原を渡ったのであります。毎日彼らは同じように働きました。このうちに、巣の中に産み落とされた卵は孵化して、一ぴきのはちとなり、めいめいは、いずこへとなく飛んでゆきました。また、わずかに残ったはちは夏の終わりまで、同じところを去らなかったのであります。

花は、季節の移りとともに、だんだん少なくなり、散ってゆきました。はちはレールの上にとまって、日の光を浴びて、じっとしていることもありました。

「もう、じきにトロッコがきますよ。」と、レールは、眠っているはちを揺り起こしてやったこともあります。はちは、飛び去りました。空の色は青々として晴れていました。はちは、どこへいっても自由であったのだけれど、やはり、このあたりから去りませんでした。

高い山には、秋がきて、はやくも冷気のたつのが、ずっと里のほうよりは早うございました。いろいろの虫が、自分たちの身の上を悲しんで泣いています。けれど、はちは、その地面をはっている虫のようには悲しみませんでした。