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ゆきくるまえのこうげんのはなし

雪くる前の高原の話

小川 未明

「童話」コドモ社、1926(大正15)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,024 字 · 10 页

青空文庫

もう、長い間ここにうめいている。それも、老いぼれたくぎめがしっかりと私の体を押さえていて放さないからだ……。」と、うらみがましく答えました。

はちは、こんな強そうに見えるレールにも、こうした悩みと苦しみとがあることを、はじめて知ったので、なおも子細に、そのようすを見とどけようと思って、くぎが押さえているところへいってみました。

なるほど、赤くさびた、老いぼれたくぎが、いっしょうけんめいにレールを押さえつけているのでした。はちはそこへ飛んできてとまると、

「なぜ、そんなにあなたはレールを押さえつけているのですか。」と、たずねたのであります。

「俺は人間からいいつかったことをしているのさ。」

「しかし、あなたとレールとは、もと同じ一家ではありませんか。兄弟といってもいいでしょう。」と、はちは、同じ鋼鉄でできていたから、そういったのです。

「しかし、俺が人間からいいつかったことを忘れて、手を放したら、なにか悪い結果になりはしないかと心配するのだ。」と、赤くさびたくぎがいいました。

「だが、あなたは、だいぶ年をとっていられますから、すこしぐらい休まれたって、だれも不思議とは思いますまい。