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ゆきのシベリア
雪のシベリア
黒島 伝治
1927(昭和2)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,276 字 · 19 页
吉田はかまわず出て行った。小村も、あとでなんとかなる、――そんな気がして、同様に銃を持って吉田のあとからついて行った。
吉田は院庭の柵をとび越して二三十歩行くなり、立止まって引金を引いた。
彼は内地でたび/\鹿狩に行ったことがあった。猟銃をうつことにはなれていた。歩兵銃で射的をうつには、落ちついて、ゆっくりねらいをきめてから発射するのだが、猟にはそういう暇がなかった。相手が命がけで逃走している動物である。突差にねらいをきめて、うたなければならない。彼は、銃を掌の上にのせるとすぐ発射することになれていた――それで十分的中していた。
戦闘の時と同じような銃声がしたかと思うと、兎は一間ほどの高さに、空に弧を描いて向うへとんだ。たしかに手ごたえがあった。
「やった! やった!」
吉田は、銃をさげ、うしろの小村に一寸目くばせして、前へ馳せて行った。
そこには、兎が臓腑を出し、雪を血に紅く染めて小児のように横たわっていた。
「俺だってうてるよ。どっか、もう一つ出て来ないかな。」
小村が負けぬ気を出した。
「居るよ、二三匹も見えていたんだ。」
二人は、丘を登り、谷へ下り、それから次の丘へ登って行った。