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ゆきのシベリア
雪のシベリア
黒島 伝治
1927(昭和2)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,276 字 · 19 页
一
内地へ帰還する同年兵達を見送って、停車場から帰って来ると、二人は兵舎の寝台に横たわって、久しくものを言わずに溜息をついていた。これからなお一年間辛抱しなければ内地へ帰れないのだ。
二人は、過ぎて来たシベリヤの一年が、如何に退屈で長かったかを思い返した。二年兵になって暫らく衛戍病院で勤務して、それからシベリアへ派遣されたのであった。一緒に、敦賀から汽船に乗って来た同年兵は百人あまりだった。彼等がシベリアへ着くと、それまでにいた四年兵と、三年兵の一部とが、内地へ帰って行った。
シベリアは、見渡す限り雪に包まれていた。河は凍って、その上を駄馬に引かれた橇が通っていた。氷に滑べらないように、靴の裏にラシャをはりつけた防寒靴をはき、毛皮の帽子と外套をつけて、彼等は野外へ出て行った。嘴の白い烏が雪の上に集って、何か頻りにつゝいていたりした。
雪が消えると、どこまで行っても変化のない枯野が肌を現わして来た。馬や牛の群が吼えたり、うめいたりしながら、徘徊しだした。やがて、路傍の草が青い芽を吹きだした。と、向うの草原にも、こちらの丘にも、処々、青い草がちら/\しだした。